1.研究要旨からわかること
『「心の健康問題と対策基盤の実態に関する研究」分担報告書』には、ひきこもりに関する報告がいくつか含まれています*1。そのなかでも、とくに「地域疫学調査による「ひきこもり」の実態調査」(PDFファイル)がおもしろそうです。おもしろそうだけど、分析結果の表やグラフが一切なく文章を読まないと内容がわからないという、ものぐさなわたしにとって非常に面倒くさい報告書でもあります。
「地域疫学調査による「ひきこもり」実態調査」について、報告書のはじめにある「研究要旨」からわかることを、いくつか抜き出してみます。
- 平成14年度に「ひきこもり」経験に関する面接調査を実施
- 調査対象は岡山県・鹿児島県・長崎県の20歳以上の一般住民から無作為抽出された1646人(協力率56.4%)
- 20〜40歳台の690人のうち9人が過去に「ひきこもり」経験あり
- 「ひきこもり」状態の子がいた世帯は、全1646世帯中14世帯(0.85%)
- この0.85%を全国総世帯数にかけると41万世帯になる
- この41万世帯は、ひきこもり「ライフタイム経験率」の下限値と考えるのが妥当
「研究要旨」しか読んでいませんが、やっぱり一番ひっかかるのは「全国で41万世帯」の妥当性です。この妥当性を検討するためにも、面倒でもちょっとずつ本文を読みすすめながら、この疫学調査についてまとめてみましょう。
*1:調査対象者向けの「こころの健康に関する疫学調査の実施方法に関する研究」を読めば、この調査研究の概要をつかむことができます。たとえば、この調査が WHO の World Mental Health(WMH)プロジェクトの一環であること、WMH 日本調査の研究事務局が国立精神・神経センター精神保健研究所の精神保健計画部にあることなどがわかります。