ビッグイシュー日本版 第13号

ビッグイシュー日本版』公式サイトの「http://www.bigissuejapan.com/backnumber/backnumbertopics/backnumber13.htm」に掲載されている目次からもわかるように、第13号のひきこもり特集が豪華ラインナップになっております。

(以下「ネタバレ」のおそれがあるので、本誌の購入を予定されている方はお読みにならないように)


ビッグイシュー日本版』第13号(目次より抜粋)

  • 特集 ひきこもり Yes!
    • ひきこもっていた頃のほうが偉かった─滝本竜彦さんの作家活動
    • ひきこもりは世の中で最もハードな闘い─ひきこもって10余年。勝山実さんの激烈な日々
    • 望んだものではなかったが、そうなるしかなかったもの─元ひきこもり、上山和樹さんの挑戦
    • 必要だから篭もる、ひきこもりを全面肯定する─芹沢俊介さん
    • 30年後、ひきこもり高齢化社会到来か?─斎藤環さん

「ひきこもり問題を個人や家族の問題だけに帰することができないのは明らかだ」(11ページ)と本誌の製作スタッフはかんがえる。そこで「ひきこもりを日本の若者と社会がこえていく現象として、その問題を理解する第一歩としたい」(11ページ)と、ひきこもりとなんらかのかたちで関わっている5名の話を聞いてみたのが、この「ひきこもり Yes!」という特集。

記事のタイトルをみるだけでも、取材をうけた5名がどのような立場からひきこもりについて発言しているのかわかっていただけるのではないかと。

以下、それぞれの記事でわたしが興味ぶかいと感じた発言だけを引用。これは5名の発言の一部を恣意的に引用したものにすぎません。だから、もし本誌を手に取ることができる方は、ぜひ自分の眼で各人の発言の全体内容を確認してほしい。いろんな意味で読みごたえのある特集だとおもう。

滝本竜彦
「ひきこもりをみんな深刻に語りすぎる気がするんですよ。最近はどんな深刻な問題にも、軽い気持ちで対峙したいと思うようになりました。人生がおしまいだとか、この先どうやって生きていけばいいんだとか、そういうリアルできつい話をカジュアルな笑い話にできればいいなと思います」(13ページ)

▼ 勝山実
「みんな『将来、将来』って言うんですよね。いま、潰れちゃってる人に未来を語っても奮い立たないのに。だから、僕は世間で悲惨になると思われているひきこもりの将来を身を持ってお見せしたいと思っているんです。死ぬまでひきこもっていましたっていう人が、どんな悲惨な状況になるのか。そういうサンプルが必要だと思うんです。40代、50代の僕を見て、やっぱり治そうとするのか、このままでいいやと思うのか、当事者に考えてほしい」(15ページ)

上山和樹
「人って夢をもつ時には野球選手になりたいとか、ケーキ屋をしたいとか積極的な夢を考えますよね。でも、今の僕は自分が望まなかったひきこもりというネガティブな経験を通して社会とつながっている。同じ悩みを持つ人の期待に答えたいと思う反面、自らの体験を晒すひきこもりというテーマはストレスがたまり、耐えられないものでもあるんです」(16ページ)

芹沢俊介
「私の本を読んで手紙をくれた30代の女性がこう書いています。『自分のなかに引き出し魔がいる。もっと休んでいたいのに、内なる引き出し魔が、そんなことしていいのかと言う。辛くなって出て、くたびれてまた引きこもる』。半年や1年など一定期間を経たら、精神科医が治療すべきという言い方は、当事者や家族にとって脅迫的です。無理に外へ連れ出して余計ひどい状態に追い込む『引き出し屋』の弊害ももっと知られるべきです」(17ページ)

斎藤環
「60歳の息子を80歳の母親が養い続けるのです。年金だけで、細々と生きていけますから、彼らがホームレスになるということはないでしょう。ただこの時、彼らに向けられる世間の目は、なお一層厳しいものになる。『税金を払ってこなかった彼らになぜ自分たちの税金が投入されるのか』と……。ひきこもり肯定論者は、そこまで考えて肯定しているのでしょうか? ひきこもりはいずれ自力で抜け出せるもの、素晴らしい収穫をもたらすもの……etc. という言説は非常に恣意的で、信用するに足りないものだと思います。ひきこもりを肯定するのなら、もっと力強く、当事者が安心し、納得できるように肯定してほしい」(18ページ)